エジプトでは3月11日からラマダン月(断食月)が始まりました。ラマダン月の間、イスラム教徒は暁(日の出の約1時間前)から日の入りまで、飲食、喫煙を禁じられます。イスラム暦は西暦と一年の長さが約11日異なるため、この分繰り上がって年々早く始まります。ここ数年は北半球の国々では春にラマダン月が巡って来るようになりました。
エジプト人はラマダン月を楽しみにしています。この月、いつもより長い時間コーランを読むなど宗教的意味合いが強いのですが、イフタール(断食後の最初の食事)に間に合うように会社の就業時間が短縮されるなど、街全体がゆったりした生活習慣になるという利点もあるのです。
ラマダン月が近づくと、通りにラマダンランプを売る臨時の店舗がお目見えします。キーホルダのような小さなものから人よりも大きなものまで、また素材も金属製、プラスチック製、木製、布張りなど様々。
また食材店は布などで飾り付けがなされ、エジプト人のおなかを満たす食材が山のように盛られて売られ始めます。
その中でも目を引くのが乾燥したなつめやしの実。断食を開くときに、ナツメヤシの実をミルク、水などに浸して柔らかくしたものを食べる習慣があるからなのです。これは預言者モムハンマドがそうしていたという言い伝えに基づいているのですが、実際にナツメヤシの実はミネラルなどの栄養価に富み、またエネルギーに素早く転換される食品であり、断食明けの食べ物として優れたものであることが現在ではわかっているそう。そして大事なイフタールは沢山のお料理を作り、親戚や友人などを招いて大勢で食べる習慣があります。
そして食後のデザートも欠かせません。普段からよく食べられるコナーファやベスブーサといったスイーツに加えて、ラマダーンだけに食べるカターエフ(エジプトではアターエフと聞こえます)があります。10㎝くらいの薄いパンケーキにレーズンやナッツを入れて半月状にし、油でカリっと上げた後に砂糖シロップへ浸したスイーツです。
また街のあちこちにラマダンランプが吊り下げられ、イルミネーションが夜の街を彩り、クリスマスのような装いに。特に夏の時期にラマダーン月が巡って来ると、暑い昼間を避けて夜ショッピングなどに出かける人が多くなるので、カイロの街は夜遅くまで賑やかです。
(2021.4.13 記 2024.3.27 改訂)