ギザにある最大のピラミッドを造営したクフ王の父、スネフェル王のピラミッド3基がダハシュールという砂漠の中にあります。サッカラ街道からの入り口もわかりにくく、軍事基地のすぐ傍にあるためか観光地らしからぬ様相を呈する一帯です。
建設された順に『屈折ピラミッド』から観光してみることにしました。外観を見るとまず目につくのが稜線の下部のところが大きく削られてしまっていること。盗賊が角の良質な石灰岩を持ち去ってしまった跡だそうです。[参考文献 1]
2019年、54年ぶりに内部が公開されました。入り口は地上よりかなり高いところにあり、設えられた階段を上って入口へ向かいます。
入り口を入ると、狭く天井までの高さが低い通路がはるか下へと伸びています。背の高い人にはかなりの難関。クフ王に大きさでは敵いませんが、玄室へ侵入する難易度では上。
その後は玄室内の観光のために作られた階段を次々と昇っていきます。
前室、その上方にある二つの玄室の中には何もないですが、この空間をつぶれずに維持するために、かかる重量を分散させた“持ち送り構造”というのが見られます。石を少しずつずらして積み上げ、断面が三角形の空間を作り出しています。ジョセル王のピラミッドで見られるように、以前は地下へ穴を掘り玄室が作られていましたが、スネフェル王は玄室を地上付近に設えました。そのため、その上に積み上げられる石の重量に耐えられる空間を作り出すことが必要だったわけで、それを実現しているのが持ち送り構造なのです。
内部の観光を終えて改めて外観を見ると、もう一つの特徴として、中心に向けて下へ傾けて石が積み上げられているのがわかります。崩壊を防ぐ一つの策だと考えていたそうですが、、、これは大きな間違いで中ほどから上は水平に積まれているそうです。[参考文献 1]
北側の出入り口から東側へ回ると崩れかかった礼拝堂と2つの石碑があります。真ん中の空いている部分の高さが2mくらい。ピラミッドの大きさと比較すると本当に小さく、見逃してしまいそう。
ここを通り過ぎて南側に回ると衛星ピラミッドと呼ばれている小さなピラミッドが見えてきます。ここは通常閉まっていますが(2021.6月時点)、鍵を開けてもらって入ることができます。構造はよく似ており、ミニチュア版です。
そして3つ目が世界で最も古い真正ピラミッド(正四角錘)です。赤っぽい岩石が使われているため『赤のピラミッド』とも呼ばれています。
入り口はかなり高いところにあります。
これも入り口を入ると急で長い通路の下りがあります。屈折ピラミッドより通路が若干広いので楽でしょうか。
このピラミッドにある玄室も持ち送り構造で作られています。
赤のピラミッド玄室の見学を終えて通路を上がってくるときにはヘトヘト。
いずれもスネフェル王が造営したこれらのピラミッドは、見栄えも今一つ、保存状態も今一つですが、4500年以上も前に真正ピラミッド造営に至った道筋が垣間見え、改めて凄いと思わされる遺跡です。
参考文献
- Mark Lehner著、「The Complete Pyramids」、Thames and Hudson Ltd 1997