我が家では“アル・アフバール”(その名もニュースと言う意味)の新聞を購読しています。毎朝新聞を届けてくれるのは、1973年からこの仕事をしているというアハマッドさん。まだ仄明るい朝6時。新聞を配達するアハマッドさんと朝の町を一緒に歩いてみました。
日本では一誌ごとに異なる取次店が配達しますが、エジプトでは担当エリアの住人が購読を希望する新聞全てを一人で配り歩きます。アハマッドさんがまず向かったのは、日中交通量がかなり多い通り。歩いていくと駐車している車に新聞を一旦置き、一誌を取り出して丸めてゴムで留めマンション2階のバルコニーに投げ入れました。このマンションではこの1部だけの配達だそう。そして少し行くとまた一部、今度は3階のバルコニーに。通りに面している部屋のみであればこの方が確かに簡単ですね。
次いで裏道に曲がって入り、マンションの前にずらりと駐車している車にまた新聞を置いて、お目当てのマンションの管理人を呼び出し、朝の挨拶や会話を交わした後マンションの住人が購読している新聞全てを手渡しました。マンションによっては中に入り、それぞれのドアの引手に新聞を挟んだりドアのそばに置いたりして配って行きます。
肩に担いだ分の配達が終わると拠点に戻ってまた新聞を担ぎます。こうやってマンション一棟一棟を回っていき、1日に配達する新聞は300~350部にものぼるそうです。素晴らしい記憶力!
エジプトでは新聞は一部2エジプトポンド(日本円に換算すると30円ほど)前後で、朝食に欠かせないアエシと呼ばれるパンが8枚買えることを考えると安いものではありません。仕事場で読みまわししているのを見かけますし、近年はインターネットで情報がいち早く入ることもあり若者が新聞を読んでいる光景はあまり見ません。このような状況を考えると、新聞の購読数が減って新聞を配り歩く人もだんだん減ってしまうのかもしれないです。
アハマッドさんは毎日歩きまわる仕事のせいか歳を感じさせない働きっぷりで次々と新聞を配って行きました。しかしその後ろ姿はいろいろなものを背負って生きてきた人生を表しているようでもあります。
(2015.10.29記 長野市民新聞寄稿記事を改編)