昔の街並みが残る旧市街では、2階建ての長屋や中庭のある邸宅にマシュラビーヤと呼ばれる格子を組み込んだ出窓を見ることができます。17世紀に建てられ現在まで残っているスハイミ邸(現在は国が所有し公開している)には、表通りや中庭に面した部屋に出窓がしつらえられています。一見、木の一枚板を彫って装飾が施されているように見えますが、実は小さな木のピースを組み立てて作ったもの。これを作成するのに接着剤は一切使われていません。実際に家の中から出窓に向かって立ってみると、木の隙間を通して程よく光が射し込んで室内は明るく、同時に風が流れ込んでくるのがわかります。暑い砂漠気候の地域において、泥で作った厚い壁で外の熱気が室内に入るのを防ぎ、このような出窓を配置して明かりと風を取り入れた優れた構造物なのですね。出窓の内側には水を入れた瓶が置かれています。これは通ってくる風で水を冷やしたもので、マシュラビーヤ(水を飲む場所)という言葉の語源になっています。
そして道路に面した窓では外から中の女性たちの姿が見えないようにするための工夫でもあるのです。